そもそも5Gとは? 第2回 第5世代のミリ波の特徴 

5Gの使用帯域、特にミリ波は厄介です。電磁波は高周波ほど波長が短く直進性が増します。レーダーにマイクロ波やミリ波帯域が使用されるのは、 反射波を捉えるために直進性が好都合だからです。一方、波長が短く同じ距離を伝播しても波数が多く減衰して遠くまで飛ばない短所もあります。 気象や航空管制塔のレーダーアンテナが大型なのも微弱な反射波を捉えるためです。そんな帯域を使う5G・ミリ波通信はこれまでとは違った状況をもたらします。
先ず遠くまで飛ばないため、これまでのように1基地局で半径数百mから数kmをカバーすることが困難です。必然的に基地局数を増やして、よりユーザーの近くに基地局 を設置しなければなりません。筆者の試算ですが、現状と同じサービスをミリ波で展開するためには現状の100倍~1,000倍の基地局が必要になります。 将来の基地局数は人口の10倍必要、と言う試算もあるほど多くの基地局が必要になります。ただ現在のようなタワー型基地局が大量に設置できる場所もなく、 それ故、小型且つ安価なスモールセルが私達の生活の中に入り込んでくると予想します。また、私達の周囲に基地局があれば通信可能かと言えばそれも正しくありません。 ミリ波の場合、直進性が高く電磁波の回り込み(回折)が弱いので電波の影ができます。つまりアンテナが見えない場所(NLOS: Non Line of Sight)では通信が不可能 なのです。基地局はユーザー全てが見通せる場所になければなりません。確実なのは建物の各部屋の天井部分に基地局(スモールセル)を配置することです。 ただし、天井の低い建物ではカバーエリアが拡がりません。端末(スマホ等)を使用するのは目線の高さ(0.8m~1.5m)ですので天井まで0.7~2.2mの高さです。 では高い建造物(例えばスカイツリー)からシャワーのように電波を「降り注げ」ば広いエリアをカバーできると考えがちですが、遠くまで飛ばないミリ波では 高低差で減衰してしまい電波が弱くなると同時に影も多くなります。やはりユーザーの身近に基地局(スモールセル)を置くのが一番確実です。 更に、波長の短いミリ波はあらゆるものの妨害を受けます。雨や雪、アンテナーカバーの水滴や氷、更には端末(スマホ)を持つ手や指も障害物となります。 この理由は本コラムの別項( 電磁波の性質 ミリ波は何故障害物に弱いのか? 技術的観点で説明します )をご参照ください。

5G普及には難題が多数あります。ではどのような用途ならば、ローカル5Gの需要を喚起できるのでしょうか?
モバイルネットワークを使用する一番のメリットは何時でも何処でも端末(スマホ)さえあれば世界中の情報が得られ、好きな人と会話ができたりメールが送れたりする ことですが、「何処でも」を我慢すれば自宅や職場のPCでもできます。ローカル5Gのみならず5Gのポテンシャルを活かすためには、
○ ユーザーが動き回る、或いはユーザーが特定の場所(事務所等)にとどまっていない
○ 少数ユーザーが大量データを必要とする、或いは多数のユーザーが同時にデータを使用する
○ リアルタイム性が重視される
○ 危険な場所での作業や危険作業を行なう
の条件が必要です。例えばオフィスや自宅のように特定の場所ならばFTTHで十分で、膨大な投資をして無線にする必然性はありません。 また、リアルタイム性が求められないならばWi-Fiも解決策の1つになり得ます。